本の紹介

『そだちの科学No.21』(日本評論社)を読んで

2013年発行の本なので、「自閉症治療・療育の最前線」といっても、もはや「最前線」ではないのかもしれません。しかし、今読んでも参考になる内容が沢山掲載されていますので、ここに紹介いたします。

滝川一廣氏は、「自閉症治療・療育はどうあるべきか」の中で次のような指摘をしています。

子育てに正解はないが、「子どもを少しでも、より幸せに育て上げること、子どもの“今”が幸せであり、“将来”も幸せであること」が大切であると。障害のある子どもの子育てにも正解はないが、前例は知っておいた方がいいと。

また、知能も自閉性も正規分布していることを踏まえると、知的障害や自閉症は「正常な個体差」であり、治療は不在と考えるべきだと。そこで大切になるのが、それぞれの個性に合った生き方を見つけてゆくことであるという。

ただ、この社会はマジョリティ(平均的な人々)が生きやすい仕組みになっているので、マイノリティ(知的障害者や自閉症者)は生きにくい個性となってしまう。そこで、マイノリティ側はマジョリティのやり方を学ぶ必要がある(例えば、SST:ソーシャル・スキル・トレーニング)。また、マジョリティ側はマイノリティが生きやすいように社会を変える(例えば、TEACCH:ティーチ)ことで、誰にとっても生きやすい社会を創造していくことが大切だろうと述べています。

対人交流の不得手なこの子ども達(自閉症児)は、人と関わることの楽しさや幸せをよく知らないので、この子ども達(自閉症児)への療育的な支援は、「いま目の前のしあわせ」を繰り返し、人と分かち合える体験を積み重ねることだろうと思う、と締めくくっています。

支援が必要な子ども達の好きなこと得意なことを、周囲の大人や子ども達が一緒に取り組むことは、彼らの「目の前のしあわせ」を「人と分かち合える体験を積み重ねること」になると私も思います。

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