本の紹介

『自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた』東田直樹著(世界文化社)を読んで

以前にも紹介した東田直樹さんの最新刊です。

33歳になった著者が、幼稚園時代を振り返って書いた本です。まず驚かされるのは、その驚異的な記憶力です。どうしてこんなことまで覚えているんだろうと、不思議になるくらいです。自閉症を「忘れられない障害」と述べた研究者がいましたが、とても分かる気がしました。

「新年度の始まり」「だから毎日、幼稚園に通えた」「君は頑張ったね」「ジャンケンポンはパー」など、幼稚園時代のエピソードは、教えられることも満載です。

この本の中の核心部分は、何と言っても「第2章 東田直樹のお悩み相談室」です。現役保育者13名の支援にまつわる悩みに著者本人が答える形になっています。「子どもがパニック状態の時、どう対応すればよいのでしょう?」や「急に飛び出したり大声を出したり・・・・・。落ち着かない子が心穏やかに過ごすには?」など、当事者からの回答はとても参考になります。

中でも白眉なのは、Q13「大人と子どもの教える・教わる関係は、どう築けばよいのでしょう?」への回答です。ネタバレになってしまうので、ここでは紹介を控えますが、幼稚園や保育園の先生方に是非読んでほしい内容でした。巡回相談で幼稚園や保育園で子ども達の様子を観察している私自身への戒めも書いてあり、身につまされる思いをした次第です。

自閉症(自閉スペクトラム症)と診断された子ども達が通っている幼稚園や保育園の先生方は勿論、児童発達支援施設の職員、自閉症児の保護者の皆さんにもお勧めしたい一冊です。

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