本の紹介

村上春樹著『街とその不確かな壁』を読んで

村上春樹作品を読み続けていると、障害のある人が重要な役割を担っている作品が多いことに気づきます。『海辺のカフカ』のナカタさんは知的障害でしたが、この『街とその不確かな壁』に出てくる“イエローサブマリンの少年”は、診断名こそ出てきませんが、おそらく自閉症児です。誕生日を聞いて、その曜日を当てる“カレンダー・ボーイ”のくだりや猛烈な読書家だがコミュニケーションが苦手な様子等がそれを物語っています。

そのイエローサブマリンの少年は、現実世界では言葉を交わすことは難しいのに、「その街」の中では、饒舌に会話が出来るのです。自閉症児は表出したいことがあるのに表出出来ない特性を持っていることを暗示している気がしてなりませんでした。そう、彼らは表出しないのではなく、表出したいことがあるのに表出することが難しいのだと思います。

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