本の紹介

『子どものこころと脳』青木省三・福田正人編(日本評論社)を読んで

滝川一廣、友田明美、十一元三、本田秀夫、田中康夫等々、発達障害関係の大御所がそれぞれの分野で執筆した大変優れた専門書です。

編者の青木省三は「はじめにー脳と環境とこころは影響し合っている」の中で、「子どもの精神障害や発達障害は、脳と環境とこころの3つが影響し合ったものと理解していくことが大切である。」と言います。

また、「子どもを診るとき、①診察室などで目の前の子どもを見ること、②家族から日常生活の情報を得ることは必須である。それに加えて、③学校や施設の情報なども重要である。①は、診察室だけではわかりにくく、プレイルームや待合室などで子どもが遊んでいる姿や、子どもと親の待ち方などが参考になる。②は、とても大切なものであるが、親が問題だと感じていないことは当然ながら話されない。極端な場合は、「別に普通です」という答えになる。そんなとき、③の、家庭とは異なる生活場面の情報が重要になるのである。」と述べています。幼稚園や保育園を巡回相談でまわっていると、家庭では「普通」なのに、幼稚園や保育園では「とても困っている」という子どもに出会うことがあります。一人っ子の場合、家庭では自分以外は皆大人なのに、園では同年齢の子どもがたくさんいるわけで、家庭と園での環境の違いが、大きく影響していると思われます。

さらに、「子どものこころは、脳と環境の双方から影響を受ける。持って生まれた特性や気質に環境からの影響が加わり、子どものこころのなかの体験や行動が生じてくる。また逆に、子どものこころの不安や恐怖が行動の変化となって現れてくると、それが周囲の人たち(子どもの環境)を混乱させたり、脳の興奮を引き起こしたりする。脳と環境とこころは、互いに影響し合っているのである。」と言います。

最後に、脳と環境とこころ、「この3つを念頭に置いて、治療や支援を行う必要がある。」と結んでいます。子どもの脳(認知特性)を理解すること、彼らが日々経験している「体験世界」(こころ)を理解すること、そして、適切な関わり方や必要な環境整備をすることが、支援が必要な子ども達の健やかな発達を促す王道だと私も考えます。

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