本の紹介

『そだちの科学No.24』(日本評論社)を読んで

この本の中の「乳幼児期の発達障害とその支援」佐野さやか・永田雅子著を紹介致します。

まず、「乳児期の発達障害のある児の特徴」として、筆者らは次のような様子を指摘しています。
「一人であそんでくれていた」「大人しくて手がかからなかった」「ずっと抱っこしていなくてはいけなかった」「抱っこしようとすると、背を反り返って嫌がった」「少しでも音がすると泣き出して大変だった」

さらに、「1歳6か月頃の発達障害のある児の特徴」としては、以下のような様子を指摘しています。
「落ち着きがない」「言うことをきかない」「思い通りにならないと、すぐに癇癪を起こす」「睡眠のリズムが作りにくい」「言葉の発達が遅い」「他児と上手に遊べない」「一人で遊んでいる」「よく迷子になる」「こだわりが強い」「独特の使い方でおもちゃを使う」「同じテレビをくり返し見たがる」「物をきれいに並べたがる」「偏食が強い」「大きい音(掃除機の音、赤ちゃんの泣き声等)をひどく嫌う」「突然の予定変更にとても戸惑う」

そうした彼らへの支援の目的として、「生来もつ発達のアンバランスさが、現在および将来にわたって、日常生活を送るうえで困難さとならないように」すること、と述べています。そして、脳の可塑性が大きい、この乳幼児期から支援を始めることが大切であり、支援の対象は、その児とその児をとりまく母親を中心とした家族であると言います。

特にASD(自閉スペクトラム症)児は、「表情の理解」「模倣」「共同注意」が苦手なため、相手が何を自分に伝えようとしているのかがわからない、のだと言います。だからこそ、「1対1の関係の中で、伝え合うことを学ぶ」(つまりは、療育)が必要であると指摘しています。幼稚園や保育園を巡回相談していて、まさにこうした状態の子ども達に数多く出会います。しかし、彼らの多くは、集団活動や一斉指導、もしくは自由保育という生活をしているだけで、個別の療育につながっている子どもは、まだまだ少ないと感じています。療育が必要な子ども達が療育につながらない理由は、保護者の「このくらいは、個性の範囲」という思いだったり、「もう少しすれば追いつく」という願いだったり、保育士や幼稚園教諭の「言いづらさ」だったりするようです。療育が必要な子ども達が不適応行動をくり返したり、二次障害になったりする前に、彼らに必要な支援やトレーニングに出会えることを心から願っています。私自身、巡回相談の中で、「療育につながるアクションを起こした方がいい」旨を心してお伝えしていきたいと考えています。

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