書店に平積みされているのをみつけて購入しました。
「最新脳科学と行動心理学で発達障害を科学的に理解する」とうたっていますが、そんなに新しいことは書かれていないと感じたのは、ほぼ毎日発達障害関係の本を読んでいるせいかもしれません。
ここで紹介したいのは、「column1:脳だけでなく、腸の影響も大きい」です。これまでの研究では発達障害の特性は、脳の機能のかたよりがあるためにあらわれると考えられていましたが、近年の研究では腸内フローラが発達障害の症状に影響を与えているのではないかという論文が多数発表されているというのです。
腸内の細菌は脳の機能にも大きな影響を与えることがわかってきていて、これを「脳腸相関」というそうです。これまでの研究で、発達障害も腸と相関関係があるとされています。たとえば、ASDの症状を抱えている子どもは、下痢や便秘などといった消化器系に関係するさまざまな症状を抱えています。アリゾナ州立大学の調査では、ASDの症状をもっている子どもの約3割から約5割が下痢や便秘などの症状を抱えているそうです。私の実感でも、発達障害の実に多くの割合の子ども達は、特に便秘で悩まされていました。
このコラムでは、ASDの症状がある子ども達の腸内洗浄を行い、健康な人の腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)を移植すると、ASDに特有な行動症状が減少し、下痢や便秘の問題も解決していったというのです。さらに治療2年後の追跡調査では、ASDの症状が45%減少したそうです。にわかには信じがたい内容ですが、今後の研究の行方を見守りたいと思いました。
腸内洗浄や腸内細菌叢移植はそう簡単にはできないと思いますので、身近なもので消化器系を整える工夫をしたいものだと思います。例えば、ヨーグルトを毎日食べたり、ビオフェルミンを摂取したり、腸内環境改善をうたう「健康茶」等を飲んでみたり。実際にこうした工夫をして、便秘がある程度改善したというお子さんもいます。便秘が続いているというだけで、イライラして気分が上下したり、切れやすくなったりしてしまうということがあると思いますので、どうすれば「快便」の状態をつくってあげられるか、周囲の親や先生方は知恵を絞り、情報を交換し合っていただければと願います。「快食・快眠・快便」は、毎日を心地よく過ごすベースラインだと考えます。